訪問口腔ケアで出会った、心がぽかぽかする「ぬっちゃん」との思い出
障害者施設での訪問ケアが、私の良い経験になった日
私は歯科衛生士として、障害者施設や高齢者施設への訪問口腔ケアにも携わっています。
ある日の訪問で出会った、忘れられない「ぬっちゃん」(仮名)との出来事があります。

ぬっちゃんは、二十代の女性。
普段は施設の中にあるテントで過ごしていて、眠っていることが多い子です。
でも、たまたま起きている日は決まって一番にお部屋へ来て、私たちを待っていてくれます。
その姿を見ると、私とドクター、助手さんの三人で、いつも声をそろえてこう言うのです。
「ぬっちゃん、今日起きてる!おはよー!」
すると、ぬっちゃんは嬉しそうに笑って、「おはよー!」と明るく返してくれます。
「今日は何時に起きたの?」と聞くと、「さっき」と照れたように答える。
その短いやりとりだけで、朝からなんだか心が温まります。
お茶目なイタズラが、訪問チームの癒しに
ぬっちゃんは、ほんとうにお茶目な女の子。
いつも私やドクター、助手さんの“隙”を狙っています。
私たちが背中を向けた瞬間——
「うわっ!」と声が出るくらいの勢いで“カンチョー”をしてくるんです(笑)。
「ぬっちゃん、やったな〜!」と言うと、いたずら成功!という顔でケラケラ笑う。
その笑顔が、もう可愛くてたまらないんです。

お尻を軽く叩いてきたり、お腹をムニムニしてきたり。
とにかくスキンシップが大好きな彼女。
悪気なんてまったくなくて、ただ「構ってほしい」「楽しいことがしたい」という純粋な気持ちが伝わってきます。
60代のベテランドクターの神対応
一緒に訪問しているドクターは、還暦を超えたベテランの先生。
技術も人柄も素晴らしく、施設でも信頼されています。
そんな先生が、ぬっちゃんのイタズラを受けたときの反応がまた最高なんです。
普通なら驚くところを、先生はニヤッと笑って、
「あはーん、もっと。」と冗談まじりに返すんです(笑)。

そのやりとりに、助手さんも私もつい笑ってしまう。
そしてぬっちゃんは満足そうにニッコリ。
訪問の現場って、もちろん医療行為ではあるけれど、
人と人が心を通わせる時間でもあるんですよね。
こういう“関わりの温かさ”が、私が訪問口腔ケアを続ける理由のひとつです。
障害者施設での口腔ケアは「癒しの連鎖」
初めて訪問に行ったとき、私は正直少し不安もありました。
「どんな人がいるんだろう…?」
「どんな感じなのか全く想像つかない…」
でも実際に現場に行くと、そんな心配はすぐになくなりました。
みんな本当に純粋で、素直に笑ってくれるんです。
話しかけるとニコッと返してくれる。
目が合うと、手を振ってくれる。

口腔ケアを通して関わるたびに、
“私のほうが癒されている”と感じることが増えました。
ぬっちゃんとの時間は、そんな訪問の中でも特別なひととき。
ケアが終わったあと、施設を出るときに「またねー!」と声をかけてくれるあの笑顔は、
今でも心の中に残っています。
訪問口腔ケアに関わる歯科医師・歯科衛生士を増やしたい
こんなに温かい現場があるのに、
実は訪問口腔ケアに関わる歯科医師や歯科衛生士はまだまだ少ないのが現状です。
「訪問をしてくれる勤務医がいない」「経費がかかる」「訪問をしたことのある衛生士がいない」
そんな理由で、一歩を踏み出せない先生も多いのです。

でも、訪問口腔ケアは地域医療の大切な一部。
そしてなにより、人の心を動かす現場です。
私は今、歯科医院の採用支援を通して、
こうした素敵な現場で働ける歯科医師・歯科衛生士を増やす活動をしています。
このブログを読んで「自分もやってみたい」と感じてくださった方は、ぜひお気軽にご相談ください。
まとめ
訪問口腔ケアは、ただの「治療」ではなく「心の交流」です。
ぬっちゃんのように、純粋でまっすぐな人たちと関わることで、
自分自身の優しさや感受性も磨かれていきます。
患者さんの“笑顔”が報酬になる——
そんなやりがいを感じられる仕事が、ここにはあります。

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